ブラヴォー!村上春樹訳『グレート・ギャツビー』

村上春樹さんの新作がなかなか手に入らなくって、


いろんな書評や感想などがいやおうがなく耳に飛びこんでは


予断をもって本書を読みたくないという思いから何気なくやり過ごしてきたし、


売り切れ中(出版社がほくほく顔だろうことて)なため


仕方がなく手にとって読み始めた


村上春樹訳『グレート・ギャツビー』(2006年刊・中央公論新社)を


たった今読み終えて、


嬉しい読書の歓びや感銘などにひたり、


そう、


あたかも名曲を名だたる名演奏家が当代随一にあっては


卓抜した解釈や見事な芸当で奏でてくれたのを耳にしたのに


匹敵すべき読後感と形容すべきだ、


思わずブラヴォー!と叫んで拍手を長く惜しまなかったくらいだった。


文字通りスタンディング・オベションをその本に献じていたのだ。


ほかの訳書を読み出してみれば分かるように、


第一章の冒頭の部分はかなり訳するのが難しい。


しかしその高いハードルをものの見事、春樹さんが越えてくれた。


何故、父親の忠告を引き合いに出したか?


その答えは悲しい最終章に示され、鮮やかな照応関係を突き出してくれるからだ。


そして狂言回しでもある語り手ニック・キャラウェイの


「内に巻き込まれながらも、外から傍観する」スタンスをすでにほのめかし、


この涙を誘わずにいられない、素晴らしくもひと夏の美しく切ない物語の基調をなして、


ところどころ効果をあげている。


たとえば、


惨劇の被害者と出会う場面、第二章のひとくだり。


「それでも僕らのいる部屋の、明かりのともった一列の黄色い窓が、都市の頭上高くにぽっかりと浮かんでいる様は、暗さを増していく通りに立つ行きずりの人の目には、秘密めいた人の営みの一端として映っているに違いあるまい。僕はまた行きずりの人でもあった。上を見上げ、そこにいったい何があるのだろうと思いを巡らしている。僕は内側にいながら、同時に外側にいた。尽きることのない人生の多様性に魅了されつつ、同時に辟易(へきえき)してもいた。」(71p)



これは27歳の作家が書いたとは思えない、素晴らしい文章。


いかに短篇小説家O・ヘンリーが下手であざといかがいっぺんに分かっちゃうくらい。


それから


作家スコット・フィッツジェラルドのただただ素晴らしく、美しく、精緻な筆致で


ついつい同情心を誘わずにいられない、


主人公ジェイ・ギャツビーの口癖


'old sport'を「オールド・スポート」と訳した村上春樹さんを、


編集者の柴田元幸さんと同程度、いやあるいはそれ以上に支持します。


それしかないからね!


「マイ・ダーリング」とか「マイ・ディア」とか


カタカナ英語がすでに今の日本人の耳になじんでいますから、


全然違和感もなく、


「ああ我が友よ、という呼びかけか」と軽く分かっちゃうんですよ。


それが却ってギャツビーのどうしようもない俗物根性と頑迷さ、気取りを


「良家の女性」にとってはただ腐臭に映るだろうが、


極めて効果的に表現、そうさね、カタカナ英語ならではの気取りだからこそ


ピッタシですねぇ。


村上春樹さん、ありがとう。


訳者あとがき(ただ饒舌なところが目につくけどね)で


いかに惚れ込んで神棚に祀ってきた、翻訳家にとってチャレンジすべき、


訳文ごしにありありと原文の難しさがうかがえる厄介な原書であることかが


よく分かりました。


全力を尽した、とご謙遜されていますが、


いやいや、とんでもない!


すっごい!


あなたの訳業で最高どころか、ほかの類書の群を抜く最高の訳と


スタンディング・オベションを長く送りたい。


(*^_^*)



‥‥


実をもうしまして、


つい今日村上春樹さんの新作を発売日から13日後で


やっと買って、これから読むつもりです。


翻訳家というものは、


名曲を解釈を新たにして唸る名演奏で納得させてくれるのにひきかえて、


小説家というものは、


それ以上に難しい権能、


自分で作曲して、そう、今までにない新しい地平を拓き出してくれる曲を問うものだから、


なんつーっか、


名演奏家のハルキに酔いしれた後だけに


ハルキの作曲新作にどんなに複雑な気持ちをもって


臨まなくちゃならないおらが気持ちになって欲しい。


ま、期待しとらんし。


ここは少なくとも


当代随一の最高の翻訳家村上春樹さんへの敬意や感謝の念を


示させていただくにとどめておきましょう。


後は稀代の文章診断士として畏れられている(と自惚れている。)おらが


惨々たる酷評ぶりに備えて


気持ちを準備しといてね♡


(*^_^*)




画像




同上の画像は


ターメリック・ライスと鶏肉トマト煮です。



(*^_^*)



ん?


この期におよんで怖気づいた?


でっへへへへ。


舌べろ~~~




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