「鳥ドラマ」制作方式、そして私の野鳥撮影術。

動画投稿サイトの野鳥を撮った作品を拝見させていただきますと、――撮影の目的も無論、ビデオ編集のし方も「何も語りかけてこない動物」を被写体にしているふうにお見受けします。

反論されるのも分かりますが、私の「鳥ドラマ」が既存の「動物映画」とどう違うかについて、説明させていただきます。
ユニークな制作方式ですよね、「鳥ドラマ」の作り方は。

(1)野鳥を撮りだめして、何の話にしたいか、アイデアをいくつか用意する。

(2)「面白そうだ」と感じたアイデアを、物語性を微に入り細を穿ち(話のディテールを豊かにし)、ふくらましながら、その基本線にのっとってビデオを編集する。

(3)何の音声のない一篇のビデオ(映画でいえばラッシュ、0号にあたるかな)が出来上がる。

(4)脚本を書く。たとえひとりで書くとしても、脚本という仕事は最低限3人がかりで書くのが基本なので、自分で「いい台詞だ」と思っても翌日になって、もう一回読み直しては書き直す。早い話、ひとりで「ツッコミ」と「ボケ」を演じるひとり漫才と同じで、ひとりで何役も演じる落語が最高の参考にもなります。

ここで留意されて欲しいのは、「人間ドラマ」と違って、何から何まで日常生活の基本動作が違う生きものがドラマを演じるので、あまりにも「人間くさい」台詞は排除して、人間の共感を誘うようにその生きものらしい台詞を書くこと。

よい例をあげましょう。野鳥が高いところに止まって、下を通り過ぎるものにもおかまいなく、糞をたらす場面があるでしょう。

それをどう解釈して、どんな台詞を書きますか?
野鳥は、人間と違って尿を出すわけじゃないので、胃腸の廃棄物をいっしょくたに肛門から出すでしょう。「糞をたれる」意識はそもそもの始めからないので、
「粗相したァ!」
という台詞は、どうもその野鳥には似つかわしくないふうに思えるよね。
そこで、人間がたまった唾を口からペッと吐く行為と同一視して、無意識の基本動作と考えて、
「なんだ?何を言ってんかぃ」
という台詞を書いてみると、不思議とその野鳥が生き生きとして見えちゃいますね。

脚本家の役割は、単に面白い話を書くだけではなく、見たところ「何も語りかけてこない動物」がまるで仮面劇の役者のようにふるまって、お芝居をするように見せかける工夫をすることに尽きます。
ですから、この段階でよい台本が出来上がるかどうかで、この制作がほとんど80%出来上がると考えて下さい。

(5)いよいよ、台本にしたがって、台詞をアフレコで入れる。声優、演出家の出番、というわけですが、このとき台詞をもう一度チェックして、間のとり方に細心の注意を払ってほしいです。
人間の三倍もすばしっこく動く生きものですから、話す速度、リズム、感情などで、映像と声のあいだに折り合いをつけるために、その間のとり方が大切ですから。

もし、映像のほうに問題が感じられたら、ビデオ編集をやり直します。

(6)それで「鳥ドラマ」の一篇が仕上がります。どこかおかしな点がないか、不自然に感じられる箇所がないか、厳正なチェックをします。

問題がなかったら、めでたく完成、というわけです。まだムード満点じゃなかったら、音楽を入れたらいいでしょう。
その仕事は、誰か音楽の出来る友達に頼めばいいでしょう。

そのよい実例はあります。姿なき殺人鬼(殺鳥鬼?)の影におびえて最高の食べ物の味が分からなくなったスズメの話を、怪談の味のある落語仕立てに作ったものです。
3年半前に作った約12分の短編鳥ドラマ:「最高のごちそう」です。

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次の動きが予測出来ない動物を撮影する場合は、悪い撮影の例で、絶対にダメです。
かくいう私も、野鳥撮影を始めた頃はそうだったですが、気づいて、以下の撮影の姿勢に落ち着いたのです。

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左目でファインダーを覗き込みながら、右目でまわりを見て注意する、ということです。これならジグザグに、複雑な動きですばしっこく飛ぶ野鳥をフレームの中につかまえながら、空いた右目でフレームの外に出た野鳥を追えるでしょう。

とくに望遠レンズをはめているか、ズームインしているときは、距離感がつかみにくいから、空いた目で全体の構図に注意を払えばいいわけでしょう。

まず練習して下さい。三脚にビデオカメラを固定して、じっと野鳥を狙い撃ちするように待つということに、やはりそれなりの限界があります。
野鳥のワイルドな魅力、ダイナミックな動きで「何も語りかけてこない動物」が初めて「何か語りかけてくる動物」になれますから。

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  • 未来の「目利き」たちへプレゼント!鳥ドラマ公開

    Excerpt: 悪いやつがいるもんだ、動画投稿サイトの作品にフィッシング詐欺か、ワンクリック詐欺のリンクをかけて。 ほんとに迷惑なんだぜ。 Weblog: 唐井誠二の「コルヌコピアエ(豊穣角)」 racked: 2007-03-28 17:55